野菜ソムリエ 藤田が行く!

今回対談させていただくのは、生活協同組合 コープふくしま 専務理事の野中 俊吉さん。

コープふくしまは、福島県内約17万人の組合員が出資し、利用・運営している、福島県最大の生活協同組合です。
今回は食品における放射性物質の問題を受けて、農水産物を実際に生活者の方にお届けする「小売業」として今の視点と、
その独自の取組みについてお話を伺いました。


(動画:約10分)

 

新基準値について

まずは、今年の4月1日から設定された食品中の放射性物質の新たな基準値についてです。

暫定規制値が設定されていた時点で、県内の食事から摂取する放射性物質、いわいる内部被曝はごくごく少量で、それは政府の計算や県内の生協の独自調査、京都大学の調査などで明らかと野中さん。その事実は、新基準値を設定したところで変わらないものとも。

ここは意外と盲点な所で、基準値を厳しくしても、実際の放射性物質の摂取が多くなったり少なくなったりするわけではないのです。

また、放射性物質に不安を感じていらっしゃる方々は、500ベクレルから100ベクレルに基準値が下がっても納得するわけではなく、この新基準値は必ずしも不安解消に繋がっていないのではないかとおっしゃいました。

この点は、生産者である私もひしひしと感じるところで、もう少しよく考えなければならないことだと思います。

 

食事に含まれる放射性物質の調査を受けて

次に、コープふくしまをはじめとした県内の生活協同組合によって行われた、食事に含まれる放射性物質の調査の内容と結果について伺いました。

普段通りの食事を普段通りのメニューで家族よりもひとり分多く料理を作って(陰膳(かげぜん)方式)、それを1日3食(おやつ・お酒も含めて)2日分、埼玉県にある日本生協連の検査センターで14時間かけてゲルマニウム半導体検出器(きわめて高精度に放射性物質を検査する機器)で詳細な検査を行ったとのこと。

50家族分検査した段階でその多くが放射性物質は非検出であり、最大でもセシウム134・137あわせて11ベクレルという結果となったそうです(コープふくしまでは最終的に100家族分を検査)。仮に最大値の方が1年間、放射性物質が同じく含まれている食事を同じ量とり続けた場合、内部被曝は0.06ミリシーベルトにとどまるということです。

 

リスクコミュニケーションの重要性

ただ、こうもおっしゃいました。

偉い学者・先生がいくら正しいことを言ったとしても、福島県民にとって「外部から押し付けられる」ということは大変なストレスになる。そうではなく、福島県民自らが自発的に学ぶ形をとることで、押し付けられたものという感覚に陥らず、正しく理解できるようになる、このことは重要であるといった内容でした。実際にコープふくしまでは、そういった「場」を積極的に設けていらっしゃるそうです。

科学的・理論的に正しいから受け入れろと言われても、現実には残念ながら不安が解消されるわけではありません。共に考え共に学ぶ・情報の共有と意思疎通をはかるといったスタンス、いわいる「リスクコミュニケーション」は、特殊な環境下にある福島県の復興を考える上で、非常に大きな要素になると強く思いました。

また野中さんは、数値の基準が独り歩きしてしまっている現状が解決することは時間がかかることであり、個々人の疑問にかみ合った学習やさまざまな取組みを、福島県のそれぞれの立場において総合的に進めていくことが解決策なのではとおっしゃいました。

そういった放射能の問題の学習の積み重ねがないと、被害者である生産者と被害者である消費者が対立することになってしまう。お互いのつらさを共有し合えるような、お互い支え合えるような学習や取組みが非常に大切だと野中さん。

まさにその通りで、被害者同士が対立するようなことはもっとも避けなければならないことであると、改めて思いました。

 

福島の現実に基づいた対策を

対談終了後の雑談で野中さんがおっしゃっていた、「事実」に基づいた・福島の「現実」に基づいた対策が大事であるということが、非常に印象に残っています。

基準というものは当然必要なものですし、実測された数字というものも大事なものですが、それを実際の自分の「生活に落とし込む」ということが、福島における放射能の問題をトータルに考える上で重要だと、今回の対談を受けて考えました。

福島県の置かれている現状を「伝える」うえで何が重要か、そのことを大いに学んだ対談となりました。