おいしい ふくしま物語

2017年2月2日

“福島とリンゴ”。意外な組み合わせかもしれません。実は果樹王国福島は、知る人ぞ知る高品質のリンゴの産地です。福島の気候条件を活かし完熟させた“ふじ”は“幻のふじ”として高い評価を受けてきました。
 
福島県が、来年度本格デビューさせるリンゴの新品種があるとの情報を入手しました。
今回は、実際にほ場で試作していらっしゃる福島市の果樹農家の佐藤 昌吾(しょうご)さんにお話を伺いました。

多くの方に支えられて

「いまリンゴを作り続けられているのはお客様のおかげです。」
 
佐藤さんは開口一番、そうおっしゃいました。佐藤さんは果樹専業農家、サクランボとモモを合わせて100アール近く栽培していますが、メインはその3倍にもなる300アール程生産しているリンゴです。そのキャリアはなんと50年にもわたり、非常に質の高いリンゴを提供されてきました。しかし、“今まで足りなくてお断りしてきた”ほど人気のあった佐藤さんのリンゴの売り上げが東日本大震災を境に6割も減ってしまいました。

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「12月中には完売していた贈答用のリンゴが余ってしまいました。リンゴの販売機を3台フル稼働して3月まで売り続けなければならなかったほどです。そしてつらかったのが、テレビで臨時ニュースが流れるとすぐにキャンセルの電話がかかってきたことでした。」
 
その時のお気持ちはいかばかりのものだったか、単に売り上げが下がるだけではなく精神的にもかなり堪えた日々だったことでしょう。このまま続けることが出来るのか…そう思い悩んでいた時に救いの手を差し伸べてくれたのが、人々の温かい想いと行動でした。

「たくさんの方々にお見舞いや義援金を頂きました。中にはここまで直接足を運んで渡してくださった方までいました。そして、これは後でわかったことですが、送り先に“福島のリンゴを送ってもいいか?”
とわざわざ確認する手間までかけてうちのリンゴを贈答に使ってくださったお客様もいたんです。もし自分が逆の立場だったらここまでできるだろうか?きっとできないのではないか…そう思うと多くの方に支えて頂いているそのありがたさが身に染みました。

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リンゴは植えてから軌道に乗るまで5年、採算を取るには10年かかります。しかし切るのは一瞬。であるならば、その方々へ恩返しするためにも今まで以上に美味しいものを作りたい、そう思ったのです。」
 
その感謝の気持ちが冒頭の言葉となって表れていたのです。50年にわたるキャリアに裏付けされる匠の技とお客様に対する熱い想い。その二つを兼ね備えたリンゴはとても美味しいリンゴなのです。

品種は地域が育てる

“今まで以上に美味しいものを”そんな思いでリンゴづくりに取り組まれてきた佐藤さんでしたが、ひとつ複雑な気持ちを抱いていました。
 
「福島県のリンゴの主力品種は“ふじ”です。出荷時期は年内いっぱい12月中が基本となります。12月中旬を過ぎると大産地である青森の“ふじ”の出荷が始まり価格が下落するので、その前に出荷し、農家の手取りを増やすということが大事ということはわかっています。しかし、これだけ品質が高いリンゴが収穫できる福島なのに、年明けにスーパーに並んでいるのは青森県産のリンゴ。福島にもうまい“ふじ”をつくっている生産者がいるのに、と悔しい思いをしてきました。」

早どりしすぎて自分の首を絞めているのではないか?適期収穫し、美味しいものをお届けすることがこれからの福島のリンゴ生産にとって大切なことではないのか?震災の後、様々な人からの想いを受けて、よりがんばっていこうと考える中で、そのような思いをもったという佐藤さん。その時に出会ったのが福島県オリジナル新品種“べにこはく”でした。

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「まだ試作段階であった“福島6号”のちの“べにこはく”を3月に食べたら、その時期には実も柔らかく酸味が抜けてしまう“ふじ”よりも美味しく感じましたし、もう一度食べたいと思ったんです。」
 
実際に、試験的に栽培してみると、着色も良く収穫前落果が少ない点が栽培的にもプラスで、農家にとって大きな魅力がある品種だと感じたそうです。

「年内は“ふじ”で勝負し、そのあとは“べにこはく”で3月まで…いや5月まで行けるのではないかと。また、今お客様が求める品質は非常に高く、蜜が入っているのは当たり前、箱を開けたときの香りから良いリンゴかどうかの評価が始まっているのですが、その点“べにこはく”は見た目も鮮烈な赤色と個性的で、蜜の入りも良い。酸味が程よく抜け美味しくなってくる2月過ぎに食べてもらえれば、お客様の記憶にしっかりと美味しいリンゴとして残ってもらえるのではないかと思います。」
 
「もちろんいいことばかりではなく収穫適期をつかむのが難しいなど“べにこはく”にも欠点があるという生産者の声もあります。しかし、品種というものはいい面と悪い面両方持っているものなのです。一回の結果で判断するのではなく長いスパンで考えていきたいですね。品種は地域が育てるんです。」

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そして最後に、
 
「“べにこはく”は福島県におけるリンゴの基幹品種になる可能性があると思っています。育てたい、いや育てます。これからも美味しいものを、お客さんに喜んでもらえるものをお届けしていきたいですね。」
 
と力強くおっしゃいました。
 
リンゴ栽培50年。佐藤さんの“べにこはく”、楽しみですね!

(記事:コッシー情報員)


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